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焦点のその先に

Beyond focus

今動物愛護の世界では「殺処分ゼロ」に大きな焦点が当てられています。
確かに何の罪も無い犬や猫たちが「殺される」のですから、そこに多くの人の関心が集まるのは至極当然の事です。

しかし、私たちは冷静に考えなくてはいけないと思います。

「殺処分」は犬や猫たちが苦しんでいる「原因」ではなく、「結果」だと云う事をきちんと認識する事が、犬と猫たちが幸せに暮らせる社会を実現する為には必要だと思うのです。

今の「殺処分ゼロ」の流れを考えると、保護団体が殺処分対象の動物を行政施設から引き出して「ゼロ」にする形が主流となっています。

広島県、神奈川県が「ゼロ」で有名ですが、広島は大きな資金力での全頭引き出し、神奈川県ではボランティア頼みが現状です。

「ゼロ」と云う「結果」のみを見ている多くの人々がこのいびつな「ゼロ」を作り出し、ボランティアの人たちに過大な負担を強いている結果になっていて、ボランティアのみなさんの悲鳴が聞こえて来ています。

ある意味、今の「ゼロ」は「結果」だけを優先し、本当に解決すべき「原因」は何も変わっていないのではないでしょうか?

「ゼロ」の広島県では10年ぶりに飼い主の持ち込みが増加し、「ゼロ」の神奈川県ではボランティアへの負担が限界に達しようとしています。

でも多くの人々にとっては「ゼロ」と云う「結果」は称賛の対象となり、それが更なる「ゼロの弊害」を生みだしているのが現状です。

弊害を生んでいるのは「結果」である「殺処分ゼロ」にばかり焦点が当てられているからではないでしょうか?

「結果」である「殺処分ゼロ」にばかり焦点を当てている事は、「ゼロの弊害」を生みだすだけではありません。

「殺処分」と云う残酷な言葉は一般の人たちには大きなハードルとして立ちはだかります。

「私には何も出来ない」「保護する事も、里親にもなれないから」
そんな言葉をよく聞くのは、今の動物愛護の世界全体が「結果」である「殺処分」に焦点が当てられすぎているからだと思います。

本来解決すべきは「原因」である事は当たり前の事で、その「原因」は多岐に渡ります。

それは「飼い主の意識」「生体小売業のあり方」「ペットと暮らす環境の不整備」「法律の不備」「弱者に厳しい社会」などです。
犬や猫たちを苦しめている「原因」は動物を取り巻く問題だけではなく、人間社会の問題も含めた多くの問題であり、それは本当に多岐に渡るのです。

多岐にわたると云う事は、逆に考えればそれだけ多くの人たちが「原因」を取り除く為の行動を取る事が出来る可能性があると云う事です。

「飼い主の意識」を変える為には啓発や教育が必要で、トレーナーさん、獣医師さん、トリマーの皆さんや、学校の先生も、音楽家や写真家やイラストレーターのみなさんも、もちろん母親や父親も行動出来ます。

「生体小売業のあり方」に対しては不買運動なら誰にでも出来るだろうし、大量消費社会に対して疑問を持つ多くの人たちも巻き込む事が可能でしょう。

「ペットと暮らす環境の不整備」を改善するのは経済活動であろうし、「法律の不備」を是正するには署名活動、ロビー活動、政治家の力も必要です。

「弱者に厳しい社会」を変えようと活動している人たちと動物愛護の共通点は多く、連携する事で動物愛護の世界は拡がり、それは現在の動物愛護活動が社会福祉活動へと昇華して行く事にも繋がるのかも知れません。

「原因」に「焦点」を当てれば、多くの人たちに出来る事がたくさんあるのに、「殺処分ゼロ」にばかり「焦点」を当てる事が動物愛護の世界の拡がりを阻害しています。

私たちHUGは今のまま、動物愛護の世界が、動物たちの問題の「結果」である「殺処分」や「殺処分ゼロ」にばかり焦点を当て続けていれば「ゼロの弊害」は更に大きくなり、愛護活動自体が、活動する人々全てが求めている筈の「犬と猫たちの幸せ」からどんどん乖離して行く危険性を感じています。

焦点のその先に何があるのか?

そこには本当に犬と猫たちの幸せがあるのか?

「悲しむ命ゼロ」を目指すHUGは今年もそれを自問自答しながら進みます。

 

平成30年1月1日  一般社団法人HUG